東京工業大学名誉教授、今野浩さんによる著書『工学部ヒラノ教授のアメリカ武者修行』は、著者がアメリカのビジネススクールでの教員生活を暴露した話を書いています。ビックリする話がたくさん書かれていますが、そのひとつひとつが最後に提示されるビジネス倫理のお話につながります。楽しく読みながらも、いろいろ考えされられる本です。
ビジネス・スクールの話がメイン
1979年インディアナ州にあるパデュー大学のビジネス・スクールで4ヶ月ほど教えていた話がメインのストーリーです。教授たちの出世バトルやビジネス・スクールのカルチャーについて書かれています。
特にスタンフォード留学の話、管理人にゲイと間違われた話、失態は許されないアメリカ式ホームパーティーの話など、アメリカ生活をしていると体験したり、考えさせられるトピックが各所にちりばめられています。
工学部ヒラノ教授のアメリカ武者修行
肉体関係を迫る学生の話
一番驚かされるの内容は、『肉体関係を迫る学生』の話ではないでしょうか?近年ハーバード大学で教員と学生の『お付き合い』が禁止されたことからわかるように、学費の高いアメリカではありそうな話です・・・果たしてヒラノ教授は誘惑に勝てたのでしょうか?(笑)。
笑いながら読んでいくと、最後に重いテーマが投げつけられる
ひとつひとつのエピソードが面白いので、楽しく読むことができます。なかには『痔の話』などが書いてあり、読んだ人は「このトピックはなんだ?」と思うかもしれません。しかし笑いながら読んていた読者に、最後のエピローグで重いテーマが投げつけられます。
すべてのトピックがビジネス倫理の話につながると理解した時、今まで笑いながら読んできたお話が、笑えない現実の問題として未開結のまま放置されていることに、気がつかせられます(笑)。
追記:本書ではヒラノ教授が航空会社のオーバーブッキングについてふれています。2017年4月に起きたユナイテッド航空の暴力による乗客排除事件は、オーバーブッキングによるビジネスモデルの問題を世間に知らしめてしまったと思います。
ヒラノ教授とは?
主人公の『ヒラノ教授』とは、著者の今野浩さんの事です。『ヒラ教授』という意味でご自身のことを『ヒラノ教授』と名付けたそうです。この書籍以外にも『工学部ヒラノ教授 (新潮文庫)』、『工学部ヒラノ助教授の敗戦 日本のソフトウエアはなぜ敗れたのか』、『ヒラノ教授の論文必勝法 教科書が教えてくれない裏事情 (中公新書ラクレ)』などシリーズ化されています。
工学部ヒラノ教授のアメリカ武者修行